古典落語「高田馬場(たかたのばば)」
【あらすじ】
浅草観音の奥山には、口上で売る蝦蟇の油売りがいる。今日も一人、二十歳を少し過ぎたばかりの若者が「さあお立会、ご用とお急ぎでない方はよおく見ておいで.…手前渡世といたすは蝦蟇の膏薬。四六の蝦蟇だ」。そこへ老齢のお武家が「二十年も前に受けた傷だが利くかな」。古傷のわけを聞くうち親の仇、岩淵伝内とわかり「いざ尋常に勝負!」。伝内は潔く仇と名乗って、討たれはするが主の命を果たすまで待ってほしいという。
明くる日、約束の高田馬場には人が大勢集まるが何も起きない。「あすこで酒飲んでるじいさん、観音様にいた仇じゃねえか。昨日観音様で親の仇っていわれてたの、旦那でしょ」
「いかにも。わしは仇討ち屋だ。だが今日はやめだ」「それじゃ向こうが済まさないでしょ」「なにあれはわしの倅に娘じゃ。高田馬場で仇討ちとなれば人が出る。さすれば料理屋が儲かる。その売上高の二割を貰って楽に暮らしておるのじゃ」