古典落語「芝浜(しばはま)」

魚屋【あらすじ】
 棒手ふりの熊五郎は大の酒好き。商いの途中で一杯呑む。一杯が二杯、二杯が……。「熊公の持ってくる魚は変だぜ」と噂が立ち、二進(にっち)
も三進(さっち)もいかなくなる。「銭も用意したから今日からは商いに出ておくれ」とかみさんにせっつかれて、仕方なく河岸に出掛けた熊五郎。芝の浜へ来てみると誰もいない。「問屋が起きてないじゃないか。かかあの奴、時を間違えやがったな。出直すのもなんだし一服している間に日が出るだろう。あっ、お天道様だ。今日から商いを始めますよろしく」

 ふと砂浜を見ると長い紐がゆらゆら。煙管の雁首で引っ張り寄せると革の財布が上がって来た。飛んで帰って中を改めると二分金で五十両ある。熊五郎は飲み残しの酒をひっかけると寝てしまった。起きて湯に行き、帰りに友達を連れて来て大騒ぎ。

 翌朝、かみさんは仕入れに行けと熊を起こす。「昨日浜で拾った五十両があるじゃねえか」「何寝ぼけてんだい、昨日浜になんか行きゃあしないよ。お前さんそりゃ夢だよ」「拾ったのが夢で飲んだのが本物か……。よし酒を絶って稼ぐ」

 これから人が変わったように精を出し、三年目には表に店を持つようになる。

 大晦日の晩、風呂屋から帰ると畳が新しくなり、すっかり新年の用意ができている。「うーん、働けばこういう除夜が迎えられるんだなぁ」。

 かみさんは三年前の金を出して、好きな酒を用意する。熊五郎は猪口を手にして「よそう、また夢になる」。外は木枯らし。

 

ふるさと納税「ふるなび」