古典落語「お若伊之助(おわかいのすけ)」

たぬき【あらすじ】
 横山町三丁目にある生薬屋(きぐすりや)、栄屋の一人娘お若は大変な器量よし。一中節(いっちゅうぶし)を習
いたいというので、に組の初五郎と頭が元侍の伊之助を世話する。稽古に明け暮れるうちに二人はよい仲になる。おかみさんから三十両の手切金が出て二人は別れ、お若は根岸のお行(ぎょう)の松に町道場を開く伯父の長尾一角の所へ預けられた。

 伊之助に会いたいお若は、ふと垣根の向こうに手拭で頰被りをした男を見る。伊之助か……。呼び入れて、毎夜会っているうちに、お若のお腹が大きくなる。一角は驚いて初五郎を呼びにやって問い詰めた。「とんでもねぇ野郎で。奴の首を引っこ抜いてくる」と根岸から両国の伊之助のところへ駆けるが、伊之助はそんなはずはないという。「行ってきました。昨日は伊之助はあっしと女郎買いに行っていて、こちらに来るわけはありません」「私は吉原のことは存ぜぬが、お前は寝こかしを食ったのではないか。お前を酔わせて寝かせ、伊之助は駕籠で来たに違いない」

 とんでもない奴だ、と初五郎は再びの伊之助の元へ行くも、休まないで夜通し相手をしたと返される。「あっそうだ、ちげぇねぇや」

 そこで、一角と二人で確かめることになった。間もなくお若の部屋の戸をたたく者がある。

 「頭、見てくれ」「おや、伊之助の野郎だ」一角は床の間の種子島を取り、火をつけて胸板をねらってどんと放つ。「頭、改めなさい」。 伊之助だと思ったのは大きな狸で、お若が産んだのは、二匹の子狸だったというお噺。