古典落語「大山詣り(おおやままいり)」

大山詣り【あらすじ】
 大山詣りは江戸の年中行事のようなもの。

 「今年もお山の時期だがな。熊さん、今年は留守を預かってもらいたい」「先達(せんだつ)さん、今年は暴れない。もし騒いだら頭を丸めて下さい。周りの連中も喧嘩をしたら二分ずつ出す取り決めにしましょう」てんで御出立。お山を無事に済ますと、街道の宿場女郎を買って神落とし、早速風呂場で喧嘩騒ぎがあった。

 「先達さん、日記なんかつけている場合じゃないよ。決まりだから留(とめ)の分と二分ずつをここに置く。熊の野郎の頭を剃っちまうよ」

 二人は酔った勢いで高いいびきの熊の頭をきれいに剃ってしまった。翌朝、勘定を済ませると一同は江戸へ発つ。

 「昨日お風呂で騒いだ人だよ、髪があったようだけどお坊さんだったんだね」と宿の女中らが噂をしていると「よく寝た、皆はどうしたい。何笑ってんだ。髷がないだと。昨日は俺は騒がなかったか」

「いろんなものを壊して大騒ぎ」

 熊公は駕籠を頼み、皆を追い越して長屋に帰ってくる。頭に手拭を載せた熊五郎は長屋のかみさん連中を集め、話して聞かせる。「実は金沢八景で船に乗ったら急に風が変わって船がひっくり返り、俺だけ助かった。この通り頭を丸め、皆にこのことを告げたら菩提を弔うために回国(かいこく)に出る」

 「井戸に飛び込もうとするかみさん達を押し止めて、熊公は次々に頭を丸めて比丘尼(びくに)をこしらえ「そろそろ亡者が着く頃だ、念仏を唱えろよ」。大きな数珠を手操って「なみあみだぶつ」が始まった。「熊公の家から念仏が聞こえるぜ。かみさん連中皆尼さんになっている。熊の野郎!」「いいじゃあないか、お山は無事にすんで、帰ってきたら皆さんお毛がなかった」