古典落語「金明竹(きんめいちく)」
【あらすじ】
与太郎が店番をしていると、中橋の加賀屋から使いが来た。「ごめんやす。旦那はんお留守ですか。わてな、中橋の加賀屋佐吉方から参じました。せんど、仲買の弥市が取り次ぎました道具七品の内、祐乗、光乗、宗乗、三作の三所物(みところもの)、備前長船(おさふね)の則光、四分一(しぶいち)ごしらえ、横谷宗珉(そこやそうみん)小柄付の脇差(わきざし)。柄前はな、旦那はんが古鉄刀木(ふるたがや)というてましたが埋れ木じゃそうで、木が違うとりますさかいお断り申し上げておきます。次はのんこの茶碗、黄檗山(おうばくさん)金明竹、ずんどうの花活け、古池や蛙飛び込む水の音。これは風羅坊(ふうらぼう)正筆の掛け物、沢庵、木庵、隠元(いんげん)禅師張り交ぜの小屏風。あれはな、わての旦那の旦那寺が兵庫におましてな、この兵庫の坊主の好みまする屏風じゃによって、表具にやって、兵庫の坊主の屏風にいたしますと、こないにおことづけ願います」。早口な上方言葉はおかみさんにもわからない。四度いわされた使いが呆れて去ると、そこへ旦那が帰って来る。「上方の方で早口なもんですから、ゆっくり思い出します、中橋の加賀屋さん。そこの使いの方で仲買の弥市さん」
「弥市が来たのか」「その人が気が違ったのでお断りに来たって。それから、遊女を買うんです。遊女は孝女でそれをずんどう切りにしたんです」「気が違っているから何をするかわからないな。ひとつくらいしっかり覚えているところはないか」「古池へ飛び込みました」「弥市には道具七品というものが預けてあるんだが、それを買ってか」「いいえ買わず(蛙)に」