古典落語「時そば(ときそば)」
【あらすじ】
「おい蕎麦屋さん、ひとつおくれ。今夜は寒いな」夜鷹蕎麦屋を呼び止めた男が散々世辞を言い倒して、さて勘定。代金の十六文を細かい銭で払った。「ひぃ、ふう、みい、よ、いつ、む、七、八、何時だ」「九つで」「とお、十一、十二、十三、十四、十五、十六」と数えて去った。
「これを見ていたいささか足りない男は「変なときに時を聞きやがった。あっ、一文かすりやがった」。俺もやろうと明くる晩、細かいのを用意して待ったが、いたのは褒めようのない蕎麦屋。やっと来た蕎麦はにちゃにちゃでどんぶりは汚い。それでも十六文だ。「……七、八、今何時だ」「へい、四つで」「五、六、七、八、九つ、十……」