古典落語「鰍沢(かじかざわ)」
【あらすじ】
身延山(みのぶさん)参詣の旅人が鰍沢を目指すうち日が暮れた。雪道に明かりが見え、そこで一夜の宿を借りる。旅人は炎で照らされた顔を見て、心中したという吉原の花魁を思い出す。「その話は本当。心中をし損なって品川溜めへ下げられて……。逃げ延びてこの山の中へ」。玉子酒を飲ませて旅人が寝込むと、女は亭主に飲ませる酒を買いに出た。「どこへ行ったんだ。亭主の留守に王子酒なんぞを食らって。冷たくなった玉子酒なんてのは生臭せぇものだ」といいながら飲むと、からだがしびれる。そこへかみさんが帰って「旅人が金を持っているようだから、仕事をしようと作ったしびれ薬の入った酒だよ」。これを聞いた旅人は毒消しの御符(ごふ)を飲み込むと裏から逃げ出した。女は鉄砲を抱えて飛び出した。逃げる男の後ろは鉄砲の火、前は崖。思いきって飛び降りると筏(いかだ)の上。壊れた筏の材にしがみついて南無妙法蓮華経を唱える。女の放った一発は髷をかすって岩へびしっ。「あぁ、お材木(お題目)のお陰で助かった」