古典落語「権兵衛狸(ごんべいたぬき)」
【あらすじ】
とある村里に一人暮らしの権兵衛さん。村の若い衆が毎晩爺さんの家に集まっては四方山話をしていく。ある日のこと、皆が帰って床に着くと「ドンドン、権兵衛。ドンドン」。誰か忘れ物でもしたかと戸を開けるが誰もいない。明くる晩も同じ刻限に「権兵衛、権兵衛」。黙って土間へ下り、戸に手を掛けて待っているところへドンと来た。すかさず戸を開けた拍子にころころっと転がり込んだ狸を取っ組み合いの末に捕まえる。
「仕置は明日にすべえ」と狸を縛って梁(はり)から吊るし、権兵衛は寝た。翌朝、その日が父親の祥月命日だと気づいて殺生を思いとどまり、「頭の毛を伸ばしてるからのぼせて悪さがしたくなるだ。おらが刈ってやる」と狸を坊主にして放してやった。その晩、またもやドンドン。「権兵衛さん」「さん付けか、おべっか野郎め。何しに来た」「今度は髭(ひげ)をやってください」